朝起きたら肩こり勤務終了のお知らせ。寝ている間に「ヤツ」と密会するあごの話

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肩こりを「ただのコリ」で終わらせず、あらゆる角度から黒幕をあぶり出すラスボス討伐シリーズ、第2弾。

前回(第1弾)では、10歳児にして肩こりでしくしく泣き、大人になってからは真夏に水すらリバースして休日診療へ滑り込んだ、私の満身創痍な肩こりヒストリーを語らせていただいた。

そんな私が、最近もっとも首根っこを掴まれている容疑者がいる。

「食いしばり」である。

食いしばり。

それを聞いた瞬間、大抵の人は「ああ、歯医者さんでマウスピース作るやつね」「歯がすり減るやつでしょ?」と思うだろう。私も完全に「歯とおあごのローカル問題」だと思っていた。

が、どうやらそうでもないらしいのですよ。

人間、寝ている間にギュムッと歯を食いしばると、あごの筋肉だけが孤独に頑張るわけではないらしい。あごの興奮はそのまま首を伝い、肩まわりまで一蓮托生でガチガチの緊張状態に引きずり込むというのだ。

ここで、私の日常の答え合わせをしてみよう。

  • 朝起きた瞬間から、すでに15キロの米袋を担いでいるかのように肩が重い。
  • 8時間しっかり寝たはずなのに、起きた時点で満身創痍。
  • なぜか朝からあごの関節がだるく、頭の芯が重い。

うわあ。心当たりしかない。

もちろん、「私の肩こりの原因は100%食いしばりです!」と断定するつもりはないけれど、このメカニズムを知ってから、私の「朝の絶望」に対する見方はガラリと変わった。


食いしばりは「歯だけの残業」ではないらしい

食いしばり(歯ぎしり)の何が凶悪かって、本人の預かり知らぬところで「夜間労働」が行われている点だ。

起きている間なら、「あ、今ブログ書きながら奥歯を親の仇みたいに噛み締めてたわ」と気がついて離すこともできる。
だが、睡眠中は無理である。こちらは健やかにアマプラの夢でも見ているつもりなのに、我らが顎関節一味は、闇夜に乗じて密かに筋トレを始めているわけだ。

専門界隈では、この睡眠中の歯ぎしりや食いしばりのことを「睡眠時ブラキシズム」と呼ぶらしい。
急に強そうな必殺技みたいな名前が出てきたが、要するに「寝ている間の無意識のギチギチ」である。

これのタチの悪さは、自覚症状が「朝の死体のような体調」としてしか現れないこと。

「昨日、そんなに肩を酷使するようなハードワークしたっけ?」という日でも、朝起きた瞬間から肩がバキバキに仕上がっている。
これまでは「枕が合わないのかな……」「寝相がアクロバティックだったのかな……」と、寝具のせいにばかりしていた。

でも違ったのかもしれない。枕の上で、私はただひたすらに、あごと首の筋肉をいじめ抜く大運動会をプロデュースしていた可能性があるのだ。寝て休むはずの時間に絶え間なく労働させられているのだから、起きた時点で体力が枯渇しているのも当然である。


肩こり、もはや「総合商社」説

調べてみると、この「睡眠時ブラキシズム」の引き金には、眠りの浅さ(微小覚醒)や、自律神経のハッスルが深く関係しているという。

完全に目が覚めるわけではないけれど、脳や体が睡眠の途中で「ビクッ」と一瞬反応する。その防衛本能みたいなタイミングで、あごの筋肉にギューッとスイッチが入ってしまうのだそうだ。

出たよ、自律神経。

肩こりの話をしていたはずなのに、歯、あご、首、睡眠、自律神経まで登場する。
要素が絡み合いすぎて、もはや一人経営の個人商店だと思っていた肩こりが、一大「総合商社」の様相を呈してきた。

でも、この話にはものすごい納得感がある。
朝一番から肩が使い物にならない日は、単に「姿勢が悪かった」の一言で片付けられるものではなく、睡眠中に体がサスペンス劇場ばりの緊張感に包まれていた証拠なのだ。

まだ一日が始まってもいないのに、朝起きた時点で、私の肩はすでに本日の勤務を終了(定時退社)している。裏切られた気分である。


あごと首、思っていたより大親友

食いしばりと肩こりの関係で、私が一番「なるほど!」と膝を打ったのは、「あごと首の筋肉は、裏でガッツリ繋がっている」という事実だ。

試しに、今これを読みながら、奥歯をギューーッと噛み締めみてほしい。
ほら、あごだけじゃなくて、首の前側とか横、なんなら鎖骨のあたりまでピキピキと力が入る感覚がありませんか。

私はめちゃくちゃある。

これを、寝ている間に、しかも加減を知らない無意識のフルパワーで何百回と繰り返しているとしたら……。
そりゃあ、首も肩も悲鳴を上げるに決まっている。

海外の研究(Gouw S. et al., 2020など)でも、寝ている間の食いしばりが発生しているとき、あごの筋肉と首の筋肉が「せーの」で完全に同期して動いていることが報告されているらしい。

あごと首、思っていたよりずっと仲良し。
お願いだから、そこは不仲でいてほしかった。


総合商社「肩こり」の会議室が足りない

もちろん、私のこの頑固な肩こりの原因が、食いしばり「だけ」だとは微塵も思っていない。

  • そもそもパソコンを打つ姿勢がアレ
  • 日頃の運動不足(任天堂様のリングフィットをサボりがち)
  • ストレス、冷え、スマホの凝視
  • 睡眠の質の乱れ

これら無数の容疑者たちが一堂に会し、結果として「肩」という一番しわ寄せのいきやすいステージで大暴れしている。
肩こり、参加者が多すぎる。もう脳内の会議室が足りない。

でもね、「寝ている間の食いしばり」という視点をひとつ手に入れただけで、戦い方は大きく変わる。

これまでは「とりあえず肩を揉む、叩く、ピップエレキバンを貼る」という局地戦しかできなかったけれど、
「あごを緩めて寝よう」「寝る前のスマホをやめて自律神経をなだめよう」「歯医者さんでマウスピースの相談をしてみよう」と、本丸(原因)を狙った戦略が立てられるようになるわけだ。


今の私にできる、ささやかな抵抗(戦術)

まだ試行錯誤の途中ではあるけれど、私が夜な夜な実践している「あご解放大作戦」を載せておく。このくらいならズボラな私でも毎晩続けられている。

  1. 起きている間の「歯の残業」を取り締まる
    本来、人間がリラックスしている時は、上下の歯の間にわずかな隙間(2〜3ミリ)があるのが正常らしい。
    でも私は、PC作業中やスマホを見て焦っている時、気づくと奥歯をガチッと噛み合わせている。歯、知らないうちに自主的に残業してるのよ。やめて。気づいたら離す、を徹底している。
  2. 寝る直前の「すとん」ルーティン
    布団に入ったら、まず肩を耳の方まで一回ギューッと上げてから、ストンと落とす。
    そして、舌の先を上あごの裏(前歯の少し後ろ)に軽くタッチさせる。こうすると自然と奥歯が離れて、顔面の緊張がフッと抜けるのでおすすめ。

あとは、頃合いを見て歯科でマウスピース(ナイトガード)を召喚するのも大いにアリだと思っている。食いしばりそのものを消滅させる魔法ではないけれど、少なくとも我が身の大事な歯がすり減る盾にはなってくれる。


まとめ:朝からバキバキな同志たちへ

何度も言うが、肩こりは決して「ちょっとした不調」なんかではない。
吐き気で水すら飲めなくなる日があるし、わりと普通に人生の進行を止めてくる強敵だ。

もし、この記事を読んでいるあなたも「寝たはずなのに朝から首肩が息絶えている」「起きたときにあごの付け根が重い」と感じているなら、一度、夜な夜な残業を繰り返す「食いしばり容疑者」の存在を疑ってみてほしい。

一発で全てが治る特効薬ではないけれど、自分の体のメカニズムを「そうだったのか!」と理解することこそが、ラスボス討伐への第一歩だと思うのだ。

次回(第3弾)は、この食いしばりをさらに裏で操っている影のフィクサー、「夜間低血糖」の罠についてじっくり解剖していきたい。

それでは同志の皆様、今夜も寝る前はあごの力を抜いて、ネコのように丸くなって休みましょう。


📚 今回の脳内参考データ

  • Kato T. et al. Sleep bruxism: an oromotor activity secondary to micro-arousal. Journal of Dental Research, 2001.
  • Huynh N. et al. Sleep bruxism is associated to micro-arousals and an increase in cardiac sympathetic activity. Journal of Sleep Research, 2006.
  • Gouw S. et al. Coherence of jaw and neck muscle activity during sleep bruxism. Journal of Oral Rehabilitation, 2020.
  • Yap A. U. et al. Sleep bruxism: Current knowledge and contemporary management. Journal of Conservative Dentistry, 2016.

※この記事は、私個人の体験談と調べたデータをまとめたものです。強い頭痛、めまい、手足のしびれ、激しい吐き気など、明らかに「これ肩こりの域を超えてない?」という異変がある場合は、自己判断でストレッチなどせず、速やかに医療機関(整形外科や脳神経外科など)を受診してくださいね。

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