うつ病体験談1:「うつ」とはネコになる病のことである

うつ攻略方法
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わたしは長年うつ病に悩まされてきた者の一人だ。今時珍しくもないとは思うけども。

既知のことかもしれないが、「うつ病」とはこういうものだと厚生労働省のページに書いてある↓

うつ病は、一言で説明するのはたいへん難しい病気ですが、脳のエネルギーが欠乏した状態です。それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴うことも珍しくありません。

つまり、エネルギーの欠乏により、脳というシステム全体のトラブルが生じてしまっている状態と考えることができます。

(参考:https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad001/)

この説明に対する、うつ病当事者の感想としては、「うんまあそうね」という感じである。確かに今思えば脳みそのトラブルだったんだな、と思えるし、決して誤った説明ではない。ただ、この説明を読んだことのある人が、実際「うつ病」にかかった際に気づけるかというと、少し難しいと思う。

ましてや、自身が「うつ病」になったり、周りの人が「うつ病」になって病気への理解を深めたいという方がこれで納得できるかというと、いやはや、かなり厳しいと思う。なので以下ではとりあえず、私の身に起きた「うつ病」についての個人的な体験例を書こうと思う。

まず、私が抑うつ状態であると判明した際の症状は、下記のようなかんじだった↓

  • 歯や顎関節が痛くなる(炊いた米が噛めないくらい)
  • 時間の流れが速い(健康な時の約3倍は速く感じる)
  • お風呂に入ることが面倒というより不可能(作業工程が多すぎて終わる想像がつかないから)
  • 2足歩行が難しい(ハイハイで歩きたい、というかもはや部屋ではそうすることもある)
  • YouTubeなどで動画を観るのが難しい(速くて動きについていけない)
  • 食料品など生活用品の買い物が何時間かけても終わらない(何を買うかを決められない)

「気持ちの落ち込み」とか「死にたくなる」とかもあったのだと思うが、それらは意識にも上らないレベルで日常化していた(その事実については「うつ病」を自覚してから8年ほど経った頃に気がついたのだが、少し話が逸れてしまうので今は置いておこう)。

実は、私が「うつ病」であることを自覚できたのは、巷でよく聞く「うつ病」の症状がきっかけではない。食事の時に起きる、歯の痛みだった。

歯や顎関節が痛すぎて、白米を噛むのも辛い日があったために、虫歯を疑って近くの歯医者に相談しに行ったのがそれである。具体的には、前歯も奥歯もとにかく全部、噛む時に痛い。前歯にいたっては、たまに「根本から折れるんじゃないか」と思うくらい痛い。しかし虫歯と言えるほどの虫歯もない。すると「心臓の病気が原因で歯痛がある可能性もあるよ」と言われて恐ろしくなり、内科に行ってみた。しかし何ともない。心臓って内臓だよな……内臓つながりで別の科でも診てもらうか、と婦人科にも行ってみた。しかし何ともない。

それから、たまーに病院に行っては相談してみることを何度か繰り返していたところ、ある内科で「心療内科とか精神科に行ってみるのもアリだよ」と言われ、へえ、と思い行ってみた。ビンゴであった。お薬をもらって飲んでみると、テキメンに歯痛と顎関節の痛みが良くなった。痛すぎて顎にアンメルツヨコヨコを塗る日もあったが、これも必要なくなった(スースーして逆に痛いときもあるので決してお勧めはしない)。

最近になってわかったことだが、私は基本的に食いしばりが強い人間であったようだ。それがストレスでさらに悪化していたのだと思う。ちなみにこの食いしばりは、その後、回復していく過程でも大きなハードルになったのだが、それはまた別の話。

食事が大好きな私にとって、食べ物をまともに噛めるようになったことはとても嬉しかった。だが、心療内科で「うつ病」を治療し始めたことには、それ以上の思わぬ恩恵もあった。

圧倒的に時間の流れが遅くなったのだ。1日が長い。2日間とか超長い。3日間とか…もはや1週間くらいに感じる。

「いや、抑うつは脳みその不具合なんでしょ?時間感覚とかおかしくなるの当然やん??」と、非常に理性的な批判をする人がいるだろうとは想像する。確かにその通りであるのだが、果たして、今現在の自分の時間感覚が一般的ではない状態だ、と自ら即座に気づける人はいるのだろうか。いや、気付けない可能性が大きい。

どういうことかというと、時間が急に「ぴぴぴぴっ」と早くなってくれるわけではなくて、脳の不具合進行とともにじわりじわり進む。なので、気がつくと一日がなんか短いような気のしないような気もしない気がするような日、というのが何回も繰り返されていって、どんどん加速する。

その結果私は、3倍速で動き続ける世界の中で「自分はなぜこんなに鈍臭いのだろう」などと思いながら生きていたわけだ。

(ジョジョ第6部『ストーン・オーシャン』では時間の流れが速くなりまくるシーンがあるが、あれは急激だったからまだよかった。もし、ゆっくりじわじわ攻撃されるパターンであれば、きっと誰も攻撃を認知することが出来なかっただろう。)

とはいえ、順調に回復が進んでいく中でも、なかなか復活しない機能はあった。それが「我慢をすること」である。おそらく普段の日本社会生活では当たり前のように使用するこの機能だが、抑うつ状態との関連がなんだかとっても強いと感じる。

まず、想像に難くない症状として、抑うつ感が強いと「我慢の力」は全く使えない。嫌いな人とは目さえ合わせることは出来ないし、行きたくない場所に行こうとすると、家の玄関先にいつの間にか嘔吐物が現れる。気がついたら吐いてるわけである。

これだけではなく、いわゆる「ちょっといつもより調子がいい」という時であったとしても「我慢の力」を使うことは、全くもって、おすすめ出来ない。もし少しでも使うと、みるみる抑うつ状態になるだけでなく、ふとした瞬間に2tトラックの前に飛び出してしまいそうになる。

これは「調子が良い」と思う自分自身が、その異変に気がつかない場合もあるが、何より「異変が起きていることに気がつきたくない自分がいる」という場合もあるのだと思う。

というのも、自分はいつも自分自身と共にいるわけだから「我慢の出来ない自分自身」が引き起こす全ての問題を引き受けているわけである。自分自身という「駄々っ子」に振り回されているように感じて、見て見ぬフリをしたくなるのだ。「うつ病」の治療中はそもそも体力が激減するので、自分自身の決定や行動に抗うことが大変であったりする。

この「我慢する力」の回復や、病前のような体力を得るまでには、それから8年ほど要した。その方法について書くとまた長くなるので、これはまた別のページに書こうと思う。

この厄介な「うつ病」の症状には非常に困らされてきたわけだが、実は思いもがけないところに、似たような存在がいることに思い至った。

ネコだ。

彼らは嫌いな者には目もくれない。用があるからと外に連れ出そうとしても、気が乗らない場合は毛玉を吐いてみる。一日中家で寝ているかと思えば、急に外へ出たがる。外へ出るだけでなく急に車の前に飛び出そうとしたりするから厄介である。

さらに、お風呂に入るのは苦手というか不可能というか無理な雰囲気で、入らせようとすると抗議してやまない。2足歩行をするのは基本難しいので、大抵ハイハイしている。「待て」だとか「お手」だとかは、気が乗ればやってくれることもあるが基本的に応じることは出来ないし、無理にやらせるのは難しい。YouTubeなどで長い動画を見続けるのは大変であるし、スーパーに行っても何を買うのか決めるのは彼らにとってとても大きな仕事である。

つまり、抑うつの状態とは「ネコである状態」なのである。うつ病とは「ネコになれる病」のことなのだ。

我々人類は、数千年の時を経て「ネコ化」という境地に至った。嫌悪すべきものを本能的に見極め、気まぐれに、しかし大胆に「生」へ従事することができる能力を開花させたわけである。

ネコになること、それもまた人生。

ただ、この「ネコ化」がツラいこともまた事実である。次回からはこの「ネコ化」(=うつ病)を寛解させていった方法について詳しく書いていこうと思う。

コメント

  1. porn videos より:

    Outstanding post however I was wanting to know
    if you could write a litte more on this topic? I’d be very grateful if you could elaborate a little bit more.
    Cheers!

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